「ファッション資材の知恵袋」ブログ第5話
今日も夏空の広がる会社のある東神田の空です。当社の住所は千代田区東神田。「千代田区なんですか!」とか「神田なんですね!」とか言われますが、千代田区の東の端で、神田と言っても神田駅が最寄駅でもなく、最寄駅は秋葉原、浅草橋という凡そ千代田区でも神田でもない雰囲気で、問屋の多い下町なんです。
ボタンの基本的な素材についてお話の第3弾でこれで最終回。今回は「ナットボタンとそのプラスチック製ボタン」を紹介します。ナットボタンは水牛ボタンに次ぐ、高級ボタンで、スーツ、ジャケット、パンツ、コートによく使われます。小さいサイズでシャツにも使うこともあります。天然素材のボタンでは、今まで紹介した貝、水牛、そして、このナットがほとんどです。
ボタンの素材とは?
再度の説明になりますが、ボタンの素材は大きく分けて天然素材と非天然素材になります。もともとは天然素材が使われていましたが、原料に限りがあるのと再現性がないので、その天然素材を真似たプラスチック製のボタンが多く出回っています。特によく使われる貝、水牛の天然素材ボタンとそのプラスチック製ボタンを見ていきました。今回はその最終回で、ナットボタンについて詳しく見ていきましょう。
ナットボタンについて
ナットボタンの原料は南米エクアドル原産のタグワ椰子という木の種子です。ニワトリの卵をひと回り大きくした楕円形の種で、種の表面は茶褐色です。中を開けると綺麗な乳白色で、この中身を輪切りにしてボタンにします。この乳白色がナットボタンの特徴で、その乳白色が象牙の色に似ていることから、アイボリーナットと言われています。
ナットボタン
天然素材を使ったナットボタンも、プラスチック製と区別するために、本ナットボタンとも言われますが、一般的ではないので、ナットボタンでいきます。ナットボタンの特徴は、その綺麗な乳白色の色。これをボタンの形状にしてから染めて、色を付けています。生地の色に合わせて染めることも可能です。
ナットボタンは染めた後に、同じボタンの中で染まり具合の濃淡が若干現れ、それが年輪のような渦模様になります。この模様がナットボタンの特徴です。水牛と違い、ボタンに温かみ、雰囲気の柔らかさがあります。実際のナットボタンはめちゃくちゃ硬いですが(笑)水牛とは違う高級感のある素材です。
ナットボタンの取り扱い上の注意点
色移り
ナットボタンは後染色で色を付けているので、色移りには注意が必要です。色止めはしているものの、白い生地に濃い色のナットボタンを付けると色が生地に移る可能性があります。配色使いは避け、同色系のボタンを選ぶことをお勧めします。
濡れた状態での放置
洗濯をして濡れた状態で長いこと放置するとボタンが膨張することがあります。乾けば元に戻りますが、乾燥機などで急速に乾燥させると割れる原因になります。また、濡れた状態で他の衣類と長いこと触れていると色移りの原因にもなります。濡れた状態で放置しないようお願いします。
経時変化
ナットボタンは経時変化と言って、革のように時間が経つとボタンの色が変化します。特に薄い色は黄色ぽくなります。これはナットボタンの特徴なので、避けられません。経時変化も一つの味とご理解いただき、変化を楽しんでみてください。
ナット調のプラスチックボタン
水牛と同じく、ナットボタンを真似たプラスチック製ボタンもたくさんあります。こちらも原料はユリア樹脂とポリエステル樹脂の2種類です。プラスチック製のボタンはどちらも、原料段階から色を付けているので、色移りの心配はありません。また、ポリエステルは後から染色することも可能なので、生地の色に合わせて染めることも簡単にできます。
水牛と同じく、ナット調のプラスチックボタンもかなり精巧にできています。プラスチック製は色移りなどの心配もないので、配色使いなどボタンの色を生地と変えたい時にはプラスチック製の原料から色の付いたボタンを使うことをお勧めします。
まとめ
天然素材でよく使われる原料である貝、水牛と来て、最後、ナットボタンの紹介を致しました。天然素材のボタンはひとまず、この3種を覚えておけば大丈夫です。また、それぞれのイミテーションのプラスチックボタンも抑えておき、用途やコストに合わせて使い分けていくといいかと思います。ナットボタンは貝、水牛とは違う温かみがあるボタンなので、ぜひ、一度使ってみていかがでしょうか。
ちなみに当社ショールームのテーブルの上にあるガラス容器には入っているのはナットボタン。ナットボタンがオブジェになっています(笑)ショールームにお越しのお客様にはボタンをプレゼントしますよ!つかみ取りで!
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